畑情報
台風14号は埼玉を直撃することはなく、南へと進路を変えていきました。暴風の被害はなかったものの、雨は降り続き、田んぼや畑は水に浸かった状態です。
昨年のような大雨とはならなかったものの、水が早く引かないと野菜の生育や稲刈りにも影響が出てきます。
先週は「彩のかがやき」というお米の稲刈りを始めました。この品種を育てているのは3枚の田んぼです。
そのうちの一番広い田んぼは、2割ほどのイネが病気にかかってしまい生育が未熟な状態です。稲刈りもその場所は避けて行うことにしました。今週には、県の農林振興センターの方に病気のイネを見てもらい、原因と来年に向けての対策を検討したいと思います。
その彩のかがやきの田んぼで稲刈りをしていると、いつの間にか上空にトンビが来ていることに気がつきました。何年か前から荒川の付近にトンビが飛んでいるのを見かけましたが、今年はその数も増え、さらに田んぼにいる何かを目掛けて舞い降りてきます。多いときでその数は6羽ほどで、中には田んぼに舞い降りて来るものもいます。カラスに比べても二回りほど大型の猛禽類が近くにいるだけでも威圧感を感じます。
稲刈りをすると田んぼにいたカエル、バッタ、小さなねずみなどが飛び出してきます。それをわかっている鳥たちはコンバインの周辺をウロウロして餌となる生き物を見つけては捕食しています。今年、西日本から南の地域ではウンカという小さな虫の被害が多く発生しているところがあります。このウンカという虫は大陸から季節風などによって運ばれてきます。繁殖力も強いため、田んぼによっては稲が広い面積で枯死してしまうことが起こります。
先日、四国の有機農家がウンカの状況をフェースブックにあげていました。隣接する慣行栽培の田んぼはウンカの被害を受けて茶色に変色した稲が広がる一方で、有機の田んぼは被害がほとんど出ていない写真でした。なぜ有機の田んぼでウンカの被害が少ないかというと、田んぼの生き物の多様性があると考えられます。通常の稲作では、雑草に対する除草剤はもちろん、田植え時には殺虫剤を苗に振りかけ、防除暦に応じて農薬を散布しています。有機の田んぼでは殺虫剤の散布はしないため、農家にとっての益虫も害虫もそのほかの虫たちも共存しています。特に農家にとってはありがたい存在であるクモの数は半端ないほどです。飛来するウンカをクモが食べ、根元にいるものはカエルやバッタが食べるので、爆発的にウンカが増えることがないと思われます。
田んぼでも、畑でもそこに集まるものの多様性が無くなると、病気や虫の害が増加します。農業には様々なリスクが発生しますが、農薬や化学肥料を使わない有機農業では、いかにリスクを少なくするかを考え、
多様性に富んだ状態を作りだすことが大切であるという考え方をするようになりました。
多様性という言葉は農業以外でもよくつかわれます。国連が提唱するSDGs(持続可能か開発目標)を達成するための軸として、この多様性の視点が大切と
言われます。しかし、多様性の視点を持つことはそれほど簡単ではないと感じます。
農業では強い農業という言葉が盛んに使われています。効率的、大規模化により競争力を持った農業を進めることが最先端の経営と言われます。例えば田んぼにしても大型機械を使い、それも無人化の機械を導入することで面積を増やし、効率的に作業を進めることが農業の進めべき方向となっています。地域の農家は高齢化し、若手は農業から離れている現状では、農地を守っていくには、大規模化した農家の存在は欠かせません。また、その農家によって地域の景観も守られています。
一方で、コロナの影響で物や人の動きが停止すると、自給に対する意識が再認識されるようになってきました。特に若い人たちの中に農業に対する関心が多くなっている印象を受けます。
地域の農業も大規模農家だけでは成り立ちません。小さな農家、兼業農家、半農半Xと呼ばれる新しい価値観を持った農家など、様々な人が農に関ることができる地域がこれから必要になってくると思います。
私たちも、これからどのように地域の中で有機農業を展開していくかを考え中です。いろいろなアイディアを出しながら、それを実現させるためにはどうしたらよいかを考えなくてはいけない時期に来ていると感じています。
稲刈りは家の前の田んぼが残っています。少し離れた田んぼで稲刈りをし、お昼におにぎりを田んぼの端に座って食べました。刈ったばかりのイネの香りを嗅ぎながら食べるおにぎりは絶品でした。
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