畑情報
今年の桜の開花予想が出され、熊谷でも3月15日くらいに桜の花が咲き始めそうです。例年よりも2週間ほど早く季節が進んでいる感じがします。畑の野菜も中心部に蕾の赤ちゃんが見えるようになっています。これから体を大きくする段階から種を付け、子を残す段階へと移っていくためです。
このトウが立った状態の蕾を食べるのは春を感じる旬の味です。菜の花や、埼玉県で多く育てられている「のらぼう菜」など蕾を食べるのに特化した野菜もありますが、そのほかのアブラナ科の野菜も春先になるとトウが立ち、蕾をつけ、やがて黄色や白などの花を咲かせます。最近ではチンゲン菜でも蕾を食べるために品種改良されたものがあったり(もちろんチンゲン菜として収穫し、食べることもできます)、小松菜など収穫しなかったものが蕾をつけ、それを商品として売っているものも増えてきました。私たちのお気に入りは白菜のトウが立ったものです。蕾自体も大きく、苦みも感じますが、それ以上に甘みを感じるからです。
このアブラナ科の蕾を食べた時に感じる苦みは「イソチオシアネート」と呼ばれる成分です。この成分は血液をサラサラにする効果や、がん細胞の発生を抑える効果などがあると言われています。春先は寒さと暖かさが交互にやってくるため、体調を崩しやすい季節でもあります。そんな時に旬と呼ばれる野菜を食べることで体調を整え、精神的なバランスを維持する効果があるのだと思います。これからの畑は、秋冬野菜が終わり、夏野菜の準備へと進む時期です。少しずつ収穫できるものが減っていく端境期となります。できるだけ旬のものを提供したいと思いますので、ご理解いただければと思います。
今年は残念ながら大豆の収穫が少なく、味噌を仕込むことができませんでした。だいたい2年に一度の割合で味噌は仕込むので、来年は大豆を多めに栽培し、味噌用の大豆をたくさん獲りたいと思います。
味噌を仕込むときにはまず麹を作ります。蒸した米に麹菌をまぶし、温度管理をしながら麹を仕上げます。麹ができたら、大豆を煮てすりつぶし、麹と塩を混ぜて味噌のもとを作り、その後は樽にいれて2年ほど熟成させています。
この麹や味噌を仕込む過程は発酵の技術を使っています。この発酵は菌や微生物が主役を務めています。
そして、食べ物だけではなく、農業の多くのところで発酵は大切な役割を担っています。
上の図は自然の生態系ピラミッドと呼ばれるものです。最上位に位置するのはタカなど肉食の生き物です。そして生態系を支えているのが土壌に住むミミズなどの生き物です。さらにこの土に中にはバクテリアや放線菌など微生物と呼ばれるものが1gの土のなかに数十億も存在すると言われています。
この微生物の中には植物にとって良くない菌も含まれています。同じ作物を同じ場所で作り続けると連作障害を起こし、作物の生育が悪くなるのですが、この原因は同じ作物に寄ってくる悪い菌が増えるためだと言われています。
土をみてすぐに良い微生物がたくさんいるとは判断できません。作物の育ち方、土の匂いや状態などから微生物が働きやすい環境になっているかどうかを見極めることが必要だと言われます。最近は、微生物を検査して土の状態を判断する土壌診断も出てきました。まだ診断料も高いので依頼するのは難しいのですが、微生物が土の状態を左右しているということが農家にも理解されるようにはなってきています。この微生物の働きを応用したのが育苗に使う踏み込み温床です。この話はまた次の機会に。
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