7月
畑情報
家の敷地内にある納屋は、電気をつけると光の家のようになります。エチオピアの言葉で「ベタブラハン=光の家」と名付けています。
この納屋は一部をお米や野菜の保冷用の部屋にしていますが、できるだけ物を置かずにイベントなど人が集まれる場所として活用することにしています。とはいえ、つい物をおいてしまい、人が集まる前にあわてて片付けることも多いのですが、昔の太い木を使った梁や、広い空間は居心地の良い場所となっています。
先週、この納屋を利用した催しを2回ほど行いました。金曜日の午後からは、地域の民生委員さんが集まり、エチオピアや有機農業の話を約1時間させてもらいました。私自身、民生・児童委員の主任児童委員の活動をしていて、その関係で話をすることになったのです。プロジェクターを使って写真を写しながら、かなり昔のエチオピアでの活動について話をしているうちに、当時のことを鮮明に思い出しました。
今、エチオピアはアフリカの中でも経済発展の進んでいる国になってきています。少なくとも、首都の風景は30年前に比べると段違いに近代化が進んでいることがわかります。田舎の風景はあまり画像としてみる機会はありませんが、私たちが滞在していた農村は、グーグルアースの画像で見る限り、それまでの住居とは違う光景になっていました。空からの写真で見ることができる家の屋根はほとんどがトタンになっていました。
30年前はトタンを使っているのは公共の施設やお金持ちの家くらいでした。トタンは高級なもので、農家にとっては買うことはできませんでした。実際の暮らしがどうなっているのかはわかりませんが、トタンを買える現金収入があるのだと思います。
2019年から2028年までの10年間を家族農業の10年とすることが国連で採択されました。世界の食料生産の8割は小規模の家族農業によって支えられています。しかし、グローバル化や大規模化により家族農業は危機的な状況に追い込まれているところも少なくありません。日本でも農家の高齢化、大規模化や効率化による経営の単作化など、家族農業のあり方にも変化がでています。
世界の食料生産を支える家族農業の衰退は、その地域や国、そして世界の食料においても危うい状況を作り出してしまいます。そこで、家族農業それも小規模な農業を守ることが、世界の食料生産の安定化につながるというのが、国際社会の流れとなっているのです。
国連は「グローバルゴールズ」として持続可能な社会の構築を掲げています。貧困に終止符をうち、すべての人々が平和と豊かさを享受できる社会を作るために、持続的な開発に取り組むことを求めています。
エチオピアの農村がトタン板の家へと変わることが、豊かさに結びついていれば良いのですが、急激な変化は、時として農家に良い影響だけを与えるとは限りません。生活にお金が必要になれば農家はそれに見合う収穫を得ないといけません。しかし、気候が不安定な状態が続けば収穫も不安定になり、収入も不安定なものとなってしまいます。物が欲しいという欲求を利用し、農家に借金をさせて儲けることを考える人もいます。国連でいくら議論を重ねても、実際の農村に住む人々の欲求などはわからないことを多いのです。
日本では、食べ物を生産する現場である農家と、食べる側の人たちの農業に対する思いにズレが広がってきている気がします。農業は単に食べ物を生産するだけではなく、環境や地域のむずび付きなども守る場でもあると思いますが、スーパーで売られているお米や野菜からは農村のことが見えてはきません。今ではスマホをかざせば、どのように育てたのか、どんな人が育てているのかがわかる時代になっています。農家の思いや野菜のおいしい食べ方も、スマホからの情報としてみることができるようになりました。でも、それは単なる情報のひとつとなっていて、農家の思いや暮らしなどを伝えるには十分ではありません。
納屋でのもう人とのイベントは、行田にあるレモンカフェのかたが出張レモンカフェと称して、納屋でのカフェ形式の飲み会を開きました。ガバレの野菜をたっぷりと使った料理はおいしいものばかりで、集まった人たちと話したり、飲んだりして、ゆったりとした豊かな時間を過ごしました。
納屋は農具や機械を置いている場所が一般的です。でも、人が集まる場所として活用することで、とても豊かな場所になると感じています。コンサートやお話の会、飲み会の場所等々、使う人によって様々な活用ができる場所となればうれしいです。家族農業を支えてくれる人が増えないと、いくら国連が提唱しても、誰にも響かないものとなってしまうのですから。
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