畑情報
暦は3月になり、周期的に雨が降るようになりました。季節の動きが例年よりも数週間早いように感じますが、桜の開花予想も早くなるでしょうか?
先週のかけだし情報では、2月に行われた日本有機農業研究会の琵琶湖であった大会の報告を書きました。有機農業の始まった1970年初めの話が中心でしたが、それから50年が過ぎようとしています。50年という時間のなかで有機農業に係る人たちは確実に増えました。また、第2世代と呼ばれる後継者がいる有機農家も多くなっています。
有機農業という言葉を使いだした当時、農業の最先端は農薬と化学肥料、機械がセットになったものでした。機械化に伴う作業の効率化と、除草という大変な作業から解放した農薬、そして均一の農産物を育てることを可能にした化学肥料とF1と呼ばれる交配種の種。そんな最先端の農業から、昔の農業へと後戻りをしたと言われたのが有機農業でした。
有機農家は消費者グループの支援を受けながら無農薬を貫き、堆肥を作って、土つくりに重点をおいた農業を始めました。村の人たちからは変わり者と言われ、虫が自分の畑にくるから農薬をまけ、といわれるなど、集団を大切にする村社会のなかでは、有機農業を続けるのは大変だったのです。
その第一世代の子供たちが有機農業を引き継ぐようになると、そこにも新しい課題が出てくるようです。
提携という生産者と消費者の関係は、有機農業が認知され、スーパーやネット販売でも有機の野菜やお米が手に入るようになると、少しずつ減少していきます。
農家を支援するために援農に行ったりすることも少なくなってきました。買う側の選択肢が増えると、農家側も売り先の選択肢を増やす必要がでてきます。そうすると、提携という関係よりも大手の有機流通業者への出荷のほうが良いとなってくるのです。
さて、日本有機農業研究会の琵琶湖での大会のテーマはPGSって何?というものでした。日本でも2000年から有機JAS認定制度が始まり、有機農産物として販売するためには有機JASの認定を受ける必要がでてきました。ただ、この有機JASは認定を受けるために費用がかかり、かつ農家はたくさんの記録をつけ、申請書類を準備しないといけません。
ただ、有機農家でも消費者の人たちに直接販売する提携を主にしている人たちは、特に有機と表示する必要がないため、有機JASを取得していない農家が大半です。
この提携のような関係が増えていけば、あえて有機の認定を受けなくても、お互いの信頼関係のうえで有機であることが認知されていきます。ただし、その信頼関係を作るというのはすぐにできることではありません。有機農業を始めたばかりの新規就農者にとっては、畑の土を作り、作物ができるようになるまでの時間も必要です。その作業に加えて提携先を探すには、相当なエネルギーを必要とします。でも、有機JASを取得するのは大変となるなかで、PGSという考え方がでてきました。
PGSは、参加型認証と呼ばれるもので、消費者や場合によっては行政関係者などが有機農業をしている農場を訪れ、農家に対して、どのような有機農業をしているかなどを質問します。また農場を一緒に見て回り、農法や資材などがを確認するなどします。
有機JASは、第三者である検査員が農場を訪れ、多くの項目を調査し、その結果の報告を受けた認定機関が有機であることを認定するというやり方です。一方でPGSは、第三者ではなく、農場にかかわりのある人を中心にして農場や有機農家を確認するというやり方です。
このPGSは南米など、世界の小規模農家を中心に広まるっており、日本ではまだ岩手県でひとつの団体が実施しているにすぎません。第三者認証はどちらかというと大規模な流通を目指す農家向けのシステムなので、世界のほとんどを占める小規模の有機農家にとってはやりずらいものでした。日本でもこれから少しずつPGSに取り組む有機農家が出てくると考えられます。まだ具体的な方法やシステムについては試行錯誤をしていく段階です。
農家の写真がスーパーなどの直売コーナーに飾られています。顔が見えると安心感を与えるということはあり、写真だけでも顔の見える関係を望む消費者は増えています。そこから一歩すすめて、実際の農場を訪問し、農家と直接話をして信頼関係を作っていくというやり方が増えていけば良いなど思います。年に1度くらいでも農家と話をするだけで、野菜や米に対する想いも一味違うものとなるはずです。
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