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  • 執筆者の写真Hiroaki Ehara

かけだし情報1175

畑情報

先週末、日本有機農業研究会の全国大会が琵琶湖の畔、大津市で開かれました。日本有機農業研究会は、1971年に設立された団体で、日本で初めて有機農業という言葉を付けた団体です。設立時に参加していた生産者は第一世代と言われていて、初期の有機農業をけん引してきた人たちです。

設立当時、九州の熊本では水俣病が発生し、稲への空中散布も全盛期でした。それまでの手作業中心による農業が、徐々に機械化が進み、同時に化学肥料と農薬がどんどん農業へと入ってきていました。農薬と化学肥料の効果はすさまじく、それまで四つん這いで草取りをしていた田んぼの米つくりは、除草剤の登場で飛躍的に楽になったのです。

先進的と言われていた農家ほど、農薬や化学肥料を大量に使用する傾向があったと言われています。当時、まだ高価だった農薬や化学肥料を使えるのは、それほど多くはなかったのかもしれません。今では当たり前のビニールハウスによる栽培も先進的な技術でした。

それまで育てることができなかった時期にもトマトが育ち、高く売ることができたのです。

 一方で、大量に農薬を使うことで起こったのが体調の不良でした。これも先進的に農薬を取り入れた農家ほど顕著に表れたと言われています。

 このような背景のなかで、有吉佐和子さんの「複合汚染」が話題となり、この本よりも10年ほど前に出版されていたレイチェル・カーソンの「沈黙の春」など、化学物質に対する危険性を訴える声が大きくなっていきました。

 農薬被害を直接受けていたのは農家です。しかし、農家には化学物質に対する情報が少なく、変だと思いながらも農薬散布を続けている状況でした。そんな時に、都市に住み、安全な食べ物が食べたいと思う人たちが集まり、農家を訪ねて農薬や化学肥料を使わない農産物を作ってほしいという運動が始まりました。

その運動は広がり、各地で消費者グループが立ち上がり、生産者と提携という関係を築いていきます。

 生産者は農薬や化学肥料を使わないと、生産量も減り、きれいな形であったり、大きい農産物を栽培することが難しくなります。特に、慣行栽培から有機に転換すると畑や田んぼは拒絶反応をおこし、ひどい生産物しか取れない時期が続きます。

それでも5年目くらいから少しずつ落ち着き、10年もすると観光栽培と比べてもそん色ない農産物が取れるようになってきます。

 転換して数年、今までのように市場に出しても、引き取ってもらえないようなものしか収穫できないときに、消費者グループの人たちは、どんなものでも全部引き取るから、絶対にあきらめないで有機農業を続けてほしいと生産者を支援していきます。生産者は、そんな人たちの思いを受けながら作業をし、お互いの信頼関係を作っていったのです。

 それからもうすぐ50年を迎えます。有機農業という言葉は認知され、今ではスーパーでも有機野菜やお米などが買えるようになりました。有機農家の数も少しずつではありますが増えていて、特に非農家が新たに有機農業を始める割合は高くなっています。

 有機農業が始まった当初は、鶏や豚などを飼い、野菜も少しずつ多品目を育て、田んぼではお米も育てるという少量多品目の有畜農業が有機農家の代名詞でした。今は、少量多品目の農家も多いですが、作る種類を限定し、購入した有機資材を使って大規模に有機農業をしている人たちが目立つようになっています。少しずつ、多品目を育てるよりも、数を限ったほうが効率的でもあり、販売先も流通業者や大手のスーパーなどに大量に出すことで、収入の拡大と安定化が見込めるからです。

 有機農業の形は多様であるほうが良いと思っています。それぞれの考えや想いは違って当然ですし、家族の形や住んでいるところによっても経営の仕方は異なります。アメリカなどでは有機に特化したスーパーもあり、有機の割合は日本よりも二けたも違うと言われます。有機農産物が誰でも気楽に手に入るようになれば皆の安心度も高くなるはずです。

 ただ、有機農業を始めた人たちの思いは、有機農業は単に堆肥などの有機資材を使うということではありません。ある種の世直し運動という部分が抜けては意味がないのです。

 有機農業を支援することは、生産者を支援することはもちろんですが、地域の環境や自然、あるいは村の共同体を守ることにもつながります。また、平和を維持することや貧困への対応、子どもがのびのびと育つ環境を作っていくことなど、多くの社会的な意味を考えることでもあるのです。 ・・続く。

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