畑情報
7月初めの雨は災害を引き起こすような豪雨になるケースがここ数年続いています。今年も熱海市で大規模な土石流が発生し、多くの住宅や人命が失われました。一か月分の雨がわずか1日で降るような猛烈な雨は、いつどこで降ってもおかしくはありません。梅雨の雨はまだ続きます。そして夏を迎えると猛暑が待っています。ワクチン接種も始まったとはいえ、まだ感染拡大が繰り返すコロナなど不安な要素はいっぱいですが、日々の農作業もやることが目白押しです。自然の厳しさを思いながらも、ふとした瞬間に感じる自然の美しさや発見などに癒されることも多いのが農業の魅力の一つかもしれません。
田植えを終えてもうすぐ一か月になります。田んぼの稲は順調に生育しているところもあれば、ようやく苗の色が緑になってきた田んぼもあり、日々水回りをしながら一喜一憂しています。
憂の部分のひとつは合鴨たちです。今年はどうも巡り合わせが良くないようで、田んぼの小屋で害獣に襲われたことを皮切りに、田んぼに放したあとも連日の雨と寒さで死んでしまうカモが多くでています。雨が降っても翌日は晴れるようなお天気であればカモも元気を回復できるのですが、強い雨が降って、翌日もまた雨のような天気では寒さのために体力を回復すおることができないまま、低体温になってしまうようです。友人で、今年から合鴨を始めたところでもタヌキの被害で数が減ってしまったという連絡があったり、夜な夜なフクロウがやってきて合鴨が被害にあっているという知りあいもいます。うちの近くでもここ数年、キジを見かけることが増えてくるなど、野生動物たちの勢力が拡大している気がします。これも人間が自然を痛めつけてきた結果なのかもしれません。
さて、4月から始めた有機農業教室ですが、少しず収穫ができるようになってきました。今、教室として借りている畑はもともと白鷺のコロニーがあった場所でした。そのため、土がとても肥えていて、ほとんど肥料を入れなくても作物が良く育ってくれました。
教室では、コロナのことを考慮し、区画を区切って一人一人で作業をしてもらっています。場所によっては生育に出来不出来があるので、自分の区画でできたものをそれぞれが収穫し、後で皆で分けて持ち帰るようにしています。先週の土曜日は、なすやピーマン、枝豆を収穫しました。
畑で作業をする前には30分ほど有機農業についての講義をしています。土の話や肥料のこと、種についてなどを話しています。先週は有機JASについての話をしました。
有機農業をしている私たちにしてみれば「有機農業」という言葉は、知識の内容に多少の違いはあるとはいえ、誰もが知っているものと思っています。でも、実際は有機という言葉から連想するものは、有機農家の認識とは違うものも多いようです。
有機農業がある程度一般的になると、有機という言葉が独り歩きをするようになってきました。有機で作りました＝安全ということが共有されると、有機肥料を使っただけでも有機と表現する農家がいたり、うちは無農薬だ、と強調する農家もいて、買う立場の消費者に混乱が広がりました。その混乱を解消することもあり、有機JAS制度ができたのです。ただ、この制度は表示に重きが置かれた制度となったために、有機農家にとっては認証料金も含めて負担が増える結果ともなりました。
実は今でも、無農薬という表現のほうが有機よりもきちんとした農業という思い込みが一般的にあるようです。それは、有機＝有機化学を連想し、化学的なものを使っているのが有機農業だと思っている人もいるからです。有機よりもオーガニックという言葉をスーパーや自然食店が使うのも、こうしたことがあるからかもしれません。ちなみに、現在は「無農薬」という言葉は使うことが禁止されています。ただ、そのことを知っている人は少なく、まだ多くの場所で無農薬という表現をしているのを見かけます。
特別栽培農産物に係るガイドラインでは、無農薬ではなく「農薬：栽培期間中不使用」というのが正しいのですが、特に罰則もなく、情報としても認知度が低いので、今でも無農薬という言葉はあちらこちらで見かける状況です。今の流通の形では、作り手と買い手が信頼関係を作ることは難しいのが現状ですが、互いの距離が近くなっていけば、表示の仕方にこだわる必要はなくなります。お互いが思いやりをもっていけば、農家も安心して作物を育てることができ、食べる側も安心して食べることができます。そんな関係が少しずつでも増えていくことが、有機農業を広げることにつながり、やがて自然環境や生態系も改善されていくことになると思います。
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